世界連鎖恐慌の犯人
ドリームインキュベータ 会長の堀紘一さんが著者です。金融業界のタブー(と思われる)点にも踏み込んで、世界的な金融危機の原因と今後の影響を語っています。まえがきでも書かれているように、堀さんの熱い思いが形になった本ですので、内容も面白くてかつわかりやすく、一気に読んでしまいました。
昨年読んだ「サブプライム後に何が起きているのか」では、証券会社と格付機関が仕組んだ「証券化商品」が金融危機の原因として取り上げられていました。本書では、さらに具体的に「インベストメントバンク」、「ヘッジファンド」の実情が取り上げられています。MBAの成績上位者がインベストメントバンクに就職する話や、多数の弁護士を抱えて法律ギリギリの範囲で巧みに利益をあげている話など、興味深く読むことができました。
本書では、金融工学を駆使した「デリバティブ」を取り上げ、実体に基づかない虚業(マネーゲーム)であると指摘しています。そして、アメリカ発の「金融資本主義」(虚の経済)ではなく、実体に基づいた経済への回帰を提言しています。
確かに、インベストバンクの給料はなぜあれほどまでに高いのか不思議でしたが、金融工学というマジックが生み出したバーチャルな利益が高収益を支えていたわけです。デリバティブが原油や原料価格の乱高下を招いたり、前提が破綻して莫大な損失をもたらした現状を見ると、アメリカ発の「金融資本主義」とはいったい何だったのかと考えさせられます。
本書を読むことで、「金融」の裏で動いていた仕組みの一端を垣間見ることができます。一個人としては、今後の資産設計を考える上でも、表面的な情報だけを鵜呑みにせずに、背後で動いている仕組みやカラクリを自分なりに考えて、判断していくことが大事だなという感想を持ちました。
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