短期間で組織が変わる 行動科学マネジメント
「行動」に焦点を当て、行動を変えることによって目標を達成する手法「行動科学マネジメント」を解説した本です。
いわゆる成果主義の弊害は、「成果」のみに焦点をあててしまい、成果に至るまでの行動(プロセス)が無視されてしまうところにあると著者は指摘しています。
確かに、「目標」→「成果」の間には「行動」があるわけで、成果をあげるためには行動を変えなければいけません。成果だけを評価していたのでは、たまたま成果を出していた人や部門がその後も成果をあげ続けることは保証できないわけです。また、成果があがらない人や部門のパフォーマンスを改善しようとしても、単なる精神論で終わってしまったり、効果がでない結果となってしまいがちです。
著者は「結果を変えるには、行動を変えるしかない」と言います。また「できない人間は、やり方が分からないか、分かっていても持続できないだけだ」とも言っています。
つまり、「組織の生産性があがらない」とか、「部下が思い通りに動いてくれない」と嘆くよりも、「1.効果をあげるやり方を示してあげること」、「2.正しいやり方を持続するための仕組みを提供すること」がなによりも重要だということです。1については、「チェックシート」が例としてあげられています。古典的なようにも思えますが、ベストプラクティスを浸透させるための方法として、「チェックシート」は確かに効果的だと思います。むしろ、2の仕組みをどのように回していくのかが、難しいところであり、読者(マネージャー)がこの本から学ぶべきところです。
本書では「PST分析」という手法を通して、社員が望ましい行動を継続していくための仕組みはどのようなものであるべきかを解説しています。望ましい行動を継続できるかどうかは、意思の問題ではなく、むしろ行動を促進するための機械的な「仕組み」作りにかかっているといえそうです。
この仕組みによって、プラスのモチベーションが働くことで、行動が習慣として定着し、組織全体の生産性改善につながるわけです。社員の行動を改善するための方法として、賞与や福利厚生といったこれまで行われてきた手法では効果が低いことについてもふれられています。このような仕組みを回すためのフレームワークとして、以下の5つのステップが説明されています。
1.ピンポイント
望んでいる結果に直結する行動を発見する。
2.メジャーメント
行動の結果を測定する(質、量、時間、コスト)。
3.フィードバック
結果・効果を本人に示すことで、自発的意欲を促す。
4.リインフォースR+
行動に報いることで、望ましい行動を継続・定着させる。
5.評価
行動と成果を評価する。
興味深いのは、4.リインフォースのところで、高価な金銭的見返りは必要ないということです。ちょっとしたねぎらいの言葉や、社内報に名前を載せること、チョコレートなど、要は望ましい行動をした時に何らかの反応があるということが重要なわけです。その人にとって、何が良い反応なのかは人によって異なります。このため、一律に対応するのではなく、マネージャーの臨機応変な判断が求められることになります。
BPMとの関連
私が最近仕事で関わっているBPM(ビジネス・プロセス・マネジメント)では、「業務プロセス」に焦点を当てて組織目標の実現を図ります。「業務プロセス」は、最終的には人の行動によって支えられているわけですから、本書の手法はBPMを導入する際にも十分活用することができそうです。
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