黒字のための「5×6」の法則
ペーパーバックでお手頃価格の1,000円ですが中身の濃い本でした。本の内容は経営者向けですが、ビジネスをより良くしたいと考えているすべての方にとって、読んでおいて損はない内容だと思います。
序章から「事業を行うのは自分が儲けるためではなく、周りを儲けさせるため」という言葉がでてきます。まるで、何かの悟りのようですが、ビジネスマンから起業し、14年に渡る事業の成功、そして破産・再チャレンジと様々な経験を積んできた著者の本だけに、単なるきれい事ではない説得力がありました。また、以下のような言葉もあります。
「失敗を社会の景気動向や従業員のせいにせず、自らのなかにある失敗原因を掴みなさい」
この言葉は、まさに著者がたどり着いた境地が現れているのだと思います。謙譲の美徳はよく言われることですが、単なる道徳で終りがちです。しかし、成功におごり高ぶった時点で、転落への道が始まるというのは歴史が証明している事実だと思います。企業も人も、「すべての原因は自らの中にある」と考えるところから、成長や改善のエネルギーが沸いてくるのでしょう。
本書では、企業の成長のステージを以下の5つに分けています。
ステージ1 「スタート期」:事業を計画し立ち上げる
ステージ2 「成長期」:基盤を磐石なものとする
ステージ3 「躍進期」:市場占有率を高める
ステージ4 「完成期」:事業計画の最終目標に到達させる
ステージ5 「転換期」:新たな事業や商品開発に立ち向かう
このようなステージは企業だけではなくて、企業内の事業にも当てはまりそうです。ステージを意識して、企業や事業を有機的な生き物と捉え、ステージに合ったマネジメントを行う必要があります。また、各ステージでは以下の6つのステップを繰り返します。これが「5×6」の法則なのですね。
ステップ1 「開墾」:市場調査や人員戦略がメインとなる
ステップ2 「種付」:営業や宣伝活動がメインとなる
ステップ3 「開花」:営業や宣伝の効果が反応として現れる
ステップ4 「結実」:反応が契約に結びつく
ステップ5 「収穫」:売上が継続して回収される
ステップ6 「休息」:いままでの反省と今後の指針を決める
それぞれのステージで、「やってはいけないこと」と「やるべきこと」が数ページ毎に展開されていきます。内容がきれいに整理されているわけではないですが、読み物として面白いです。これから起業する人は起業のシミュレーションとして、すでに起業している人は現状を振り返る材料として活用できそうです。章末のコラムで紹介されている、地方産業のレポートも非常に味わいがありました。
現在、社内の新規企画立ち上げに関わっている私としては、起業のライフサイクルの考え方が参考になりそうです。また、何といっても「慢心を戒め、現状に固執せず、お客様や周囲の企業を巻き込んで共に成長していく」という、本書を貫くメンタリティーは常に持ち続けていきたいものだと思います。
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Comments
こんにちは ビリオネアさん
偶然あなたのブログに立ち寄りました。黒字の...著者の鈴木健介です。
拙書を取り上げてくださいましてありがとうございます。あなたがおっしゃるように、なるべく多くのビジネスマンが参考にしてくださることを望んで書いたのですが、大きな書店でも経営指導の棚に分類されているところが多く、残念に思っておりました。ここで「ビジネスをより良くしたいと考えているすべての方にとって、読んでおいて損はない」と紹介くださったことはとても励みになりました。ありがとうございました。
昨日3部目「経営者は危なくなるほどよく笑う」がリリースされました。書店を通る機会がありましたらちょっと立ち読みしてみてください。
最後になりましたがビリオネラさんの仕事がますます発展されることを祈念しております。
Posted by: 健介 鈴木 | Sunday, September 21, 2008 10:18 PM
鈴木様
この度は、ご丁寧なコメントを頂きましてありがとうございました。21日より、長期休暇で海外におりましたため、返信が遅くなりまして申し訳ございません。
ご紹介頂きました「経営者は危なくなるほどよく笑う」ですが、とても興味をそそられる内容ですね。ぜひ読ませていただきます!また、順序が逆になってしまったのですが、「カッコ悪く起業した人が成功する」の方もこれから読むところでございます。
私のような一介のサラリーマン(技術者)が、書籍を通して鈴木様の豊富な経験を共有できるというのは非常に有難いことです。日本のビジネスをより元気にするためにも、今後ともご指導・ご鞭撻のほど何卒宜しくお願いいたします。
Posted by: ビリオネア | Monday, September 29, 2008 01:36 PM
いろいろとありがとうございます
地方講演が多くなかなか拝見する時間がありませんがこれからもときどき立ち寄らせて頂きます
Posted by: 健介 | Tuesday, September 30, 2008 09:32 AM